ハタオリマチニヒビクウタ

By 2020年11月1日11月 9th, 2020COLUMN


ハタオリマチフェスティバルでは、毎年イベントの最後にクロージングライブを開催しています。
その名も「ハタオリマチニヒビクウタ」と題して。
機織りが盛んな富士吉田のまちには、今も昔も工場の近くに行けば「ガッシャンガッシャン」と機を折る音が聞こえてきます。その規則正しいリズムは時にこどもの子守唄になったり、機織り関係の仕事に携わる人にとってはずっと脳裏に残るこの街ならではの音になっていました。

このまちのいとなみを「音」でも伝えたいとずっと大事にしているクロージングライブ。
その中でも思い出深い2017年のハタオリマチニヒビクウタのライブレポートをお届けします。
この年のゲストは、バンド活動を休止している山梨出身の3人のメンバーからなる「WATER WATER CAMEL」。この日は特別に1日だけのお休み返上をバンドが了承してくれて実現しました。

WATER WATER CAMELは1995年に中学の同級生で結成されました。彼らの暮らし、成長にいつも音楽が寄り添い、2015年には20周年を迎えてアサヒアートスクエアで20周年ライブも開催し、全国から多くのファンが訪れるまでになりました。
彼らの曲はその時々の希望や憂いや愛おしさがつまった音と言葉で、それぞれの人に優しく寄り添うような音楽だと感じていました。
バンドのギタリストでもある田辺玄さんには初回のハタフェスのライブから演奏をお願いしていて、今もクロージングライブをパートナーでもある森ゆにさんと一緒に作り上げてくれています。
ハタフェスのテーマソングでもあるLOOMが生まれたのも田辺さんとゆにさんのおかげです。
2016年に惜しまれつつ活動を一時休止した中で、田辺さんやメンバーと話し合う中で、ハタフェスにとってWATER WATER CAMELの音楽の力がどうしても必要ということを理解していただき、この1日だけのお休み返上ライブが実現することになりました。今思うと、いろいろな条件が少しずつ良い方向に重なり全てがうまくいってこの日を迎えたのだと思います。
田辺さんは現在STUDIO CAMEL HOUSEとしてレコーディングのエンジニアとして、ギタリストとして、さらには映像や空間のサウンドデザインも手がけ、音を通して人と場を繋いでいます。
富士吉田で育った経験もあり、富士吉田をとても身近に感じてくれているのだそう。

バンドのボーカルの齋藤キャメルさんは、以前山梨で「パタゴニアの南」という喫茶店をいとなんでいました。喫茶店なのか、レストランなのか、それとも他のなにものでもないパタゴニアという名前のついた最果ての場所なのか。齋藤さんがいる、ということで成り立つ場所だと思っていました。
いまは福岡に移り住み、ギター1本で歌をうたうことも続けています。
彼が織りなす言葉は優しく、厳しく、愛おしい。

コントラバスとエレキベースを弾きこなす須藤ヒサシさんは、多数のアーティストのライブサポート、レコーディングにも参加し、現在は山梨に帰郷し家業でもあるまちの電気屋さんの「スカイ通信」で働いています。日々の暮らしをちょっと豊かにするお手伝いをしてくれる貴重な電気屋さんです。ケーブル職人の異名を持ち、PAなどでもハタフェスに毎年参加してもらっています。

ほんとうにこの日を待ち望んでいた人が何人も何人もいたことは、ライブ当日になってまざまざと知ることになります。わたしたちハタフェス実行委員ももちろんですが、それと同じくらい彼らの音楽を楽しみにしている人が全国からハタフェスに遊びに来てくれたことで証明されました。北海道からキャメルがいるならと出店を申し出てくれた方もいました。彼らがひたむきに向き合って来た音楽が、ちゃんと届くべき人たちに届いているのだなと感じました。
ハタオリマチのいとなみも、そんな彼らの活動のように、しっかりと届くべき人たちのところに届けたいと、このライブが終わって何日かしたあとに、気持ち新たにその想いを強く自覚したことを覚えています。


広い体育館でおもいおもいに自身の思い出とともにキャメルの音楽に聞き入る人、はじめて聞いた人、水平線という曲で肩を組み合い踊るひと。ひさしぶりの友人に会うような、とてもアットホームな音楽会になりました。
ハタオリマチに彼らの音楽がしっかりと響きました。そして、音楽の力をまじまじと見せられた気がします。
音楽を奏でる側ではないけれど、音楽の力を信じて彼らに託したことはハタフェスにとっても大きな出来事でした。その場にいた全員が、ハタオリマチでのキオクを持って帰ってくれたことでしょう。
最後に参加者全員で集合写真。

今年はハタフェスとしてのマーケットはできませんが、「ハタオリマチニヒビクウタ」は開催したいと思っています。
詳しくは決まり次第ご報告しますので、ウェブサイトをぜひチェックしていてくださいね。
ハタオリマチでまたお会いしましょう。